築年数だけでは決まらない?将来の不動産の資産価値

豆知識

「35年後にこの物件に資産価値はあるのでしょうか?」
「不労所得を得ようとした時にはほとんど家賃をいただけないのでは?」
お客様へご提案する中でよく聞かれる質問です。
確かに、新築物件でもローン完済時には築35年、中古物件ともなれば築40年以上のケースもあるため、将来の物件の資産価値については十分な検討が必要です。
本日は、築年数の経過に伴う経年劣化による建物そのものの機能低下と、不動産としての資産価値の関係性について説明し、「なるほど。古いから価値が無くなる訳ではないな」と知っていただくとともに、物件選定の目安を提示します。


そもそも建物ってどのくらい保つものなの?



日本で最も古い建物は法隆寺で、607年に建設されました。
実に築1400年を超えており、世界最古の木造建築物としても知られています。
使用された木材が非常に耐久性高いことと、宮大工による日々のメンテナンスの賜物と言えますが、14世紀が経った日本の最新の建築基準法により施工された鉄筋コンクリート製建築物が半世紀経たずしてその価値の一切を失うのでしょうか。
もしかすると、人の寿命の時間的尺度と流行り廃りの激しい現代の価値基準で「築40年って相当古いから誰も住まないのでは?」とのバイアスが掛かっているかもしれません。
大切なことは、購入目的ごとに考慮すべき不動産の将来の資産価値は違うということです。


具体的にどのくらいの期間価値が保証されるの?~耐用年数と耐久年数の違い~



まず、物の価値を計る基準として耐用年数耐久年数があり、耐用年数とは資産の減価償却を行うために定められた期間であり、国が法律で定めた期間です。
次に耐久年数ですが、こちらはメーカーなどが独自の調査や試験によって設定している一定の基準に基づいて発表している、「該当の資産を使い続けられると見込める期間」のことです。
賃貸用として物件を所有する場合は、購入時点での耐用年数を把握した上で、以下ご説明する将来の資産価値を検討することが重要です。


不動産投資において考慮すべき将来の「価値」とは



では、賃貸用として物件の購入検討する場合に考慮すべき将来の価値についてですが、まず価値の内訳として、土地と建物の2つがあり、内容として売却価値・収益価値・税務上の資産価値があります。
前提として、建物の資産価値は年々減少し土地は変動する点と、新築で購入した価格を上回ることは基本的にない点に理解が必要です。

今回は、区分所有に焦点を置き、売却価値と収益価値に基づく将来の不動産の資産価値を決める要素について説明します。
大きく以下の5つが挙げられます。
・土地の広さや形状、公法上の規制
・物件の構造や築年数、内装設備
・建物の耐震性や地勢、地盤の良し悪し
・立地周辺の良し悪し
・物件の希少性

特に将来の資産価値を計る、つまり購入時の資産価値からの減少の程度(リスク)をいかに抑えるかと考えた場合、以下の項目に関し確認することが重要です。
・生活の利便性(商業施設、学校、病院等の有無)
・交通アクセスの容易性(最寄り駅との距離)
・築年数と眺望、日当たり、メンテナンス状況
・河川氾濫や津波や地震の揺れに対する土地と物件の耐久性(ハザードマップ)
・土地公示価格の推移や中古物件の場合、売買取引価格や家賃推移

また、物件を所有し賃貸することにより行う確定申告に関わる税務上の建物の資産価値については、法令上の耐用年数(鉄筋コンクリート製建造物:47年)を超えることにより無くなるため、購入時の築年数が出口戦略と合致しているかの確認も重要です。


実際古い物件って価値あるの?~市場における築古物件の価値は~



では、実際築年数が20年以上経過した物件の市場価値に関して見ていきましょう。
東京23区を対象に賃貸マンションがどの程度市場で取り扱われているか(以下、ストック戸数)、築年数10年ごとに築1年~築49年のデータを見ると、最もストック戸数が多いのが「築29年~築38年」であり、「築古だけど立地が良い」などの立地に関わる資産価値が物理的経年劣化による資産価値を逆転することが分かります。(平成30年住宅・土地統計調査)
また、賃料に関しても駅徒歩7分圏内のコンパクトタイプの賃貸マンションであれば、築35年の平均賃料は新築時を100とした場合、平均80%を維持していることから立地の十分な検討を行えば、ローン完済時でも収益価値があると言えます。


まとめ



今回は「古さ」と「資産価値」の関係性についてご説明しましたが、物件ごとに推察される将来の資産価値については変わるため、購入時には本コラムで記した内容をよく確認した上でご判断いただければ幸いです。
一つ確実に言えることは、どの物件を購入し運用するかの検討の前に、どのような目的で購入し運用するかを先に決めることが大切だということです。

ラクサスマネジメント株式会社 ライフコンサルティング事業部
シニアコンサルタント 奥元 幸治

Koji Okumoto ラクサスマネジメント株式会社/ライフコンサルティング事業部
愛媛県出身。
令和4年まで陸上自衛官として勤め上げた。
超実力主義な評価制度のラクサスマネジメントでチャレンジしてみたいと感じ、
投資用不動産営業に転身。
将来的には地方議員・国会議員として、全身全霊で国・故郷へ恩返しをしたい。

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